幼児期の子どもの上手なしかり方って?感情的にならないためには?アイメッセージを上手に使おう



子育て中の悩みは尽きませんが、なかでも「子供のしかり方」は悩みの種。
危険なことやほかの人の迷惑になる行動をして、とっさにきつく叱ったり、
なかなかいうことを聞いてくれない子供についイライラして言いすぎたり。
「今日は言いすぎちゃったな・・・」と冷静になって、落ち込んでしまうこともありますよね。
子供のしかり方についてお伝えします。


怒ると叱るは意味が違う!

まず、怒るということと、叱るということは似ているようで意味が違うものです。
怒ることと叱ることの大きな違いは、「子どもの最善の利益」を考えているかどうかです。

保育・教育現場や司法の場でも用いられる言葉に「子どもの最善の利益」というものがあります。
「子どもの最善の利益」とは、現在や将来を含め、子どもにとって何が一番の利益になり得るかを考え行動する原則です。

「怒る」というのは、自分の怒りの感情を相手にぶつけるという行為です。例えば、「なんでいうことをきかないの!」とものを投げつけるなどの行為です。そこに相手の気持ちを考えたり、「子どもの最善の利益」を考えたりする気持ちはありません。自分のこらえきれない感情を相手にぶつけてしまう行為が、怒るということです。

一方、「叱る」ということは、「子どもの最善の利益」のためによくない言動について伝えることです。子どもがスーパーで走り回っていたら、多くの保護者は叱ります。それは、周りの人に迷惑がかかったり危険が及ぶことを防ぐためというのはもちろんですが、子どもに「人に迷惑をかける行動をしてはいけない」という社会で生きていくための常識を伝えたいという思いも内包しています。

叱るとは、伝えることです。
多くの保護者の方々は、意識せずとも「子どもの最善の利益」をすでに考え、伝えようとしているのです。
しかし、その伝え方が難しいところですよね。

子どもに伝わりやすくなる叱り方のポイント4つ

子どもに納得してもらいやすくなる叱る際の、伝え方のポイントを紹介します。

気持ちを肯定してから叱る

子どもに叱るときは、まず気持ちを肯定します。
子どもは子どもなりに思いがあって行動を起こします。自分のやっていることを急に否定されると、気持ちが追いつきません。叱るときはどうしてそうしたかったのかという理由を聞いて、「〇〇をしたかったんだね」と気持ちを肯定します。そのあとで、どうしてよいくないことなのかを伝えます。
まだうまく話せない年齢の子どもの場合は、保護者が今の状況や気持ちを代弁します。耳から自分の状況や気持ちを聞くことで、自分の気持ちを分かってもらえていると安心して話を聞くことができます。

また、子どもの話を聞いたり思いを汲んだりすることで、保護者のほうも子どもの思いに気づくことができます。子どもの自尊心を大切にするためにも気持ちを肯定してから叱るようにしましょう。

「行動」についてよくないことを伝える

叱るのは、「行動」についてだけにしましょう。
例えばスーパーで走り回る子どもに対して
「そんなことだからあなたはだめなのよ!」
などの言葉は子どもの人格を否定する言葉であり、自己肯定感を傷つけてしまいます。
「走っちゃだめ!広いから走りたくなるよね。
でも走ると、人にぶつかるかもしれないし、あなたがけがをするかもしれない。」
と伝えれば、明確に行動について否定されていることがわかります。
「行動」について叱っていることを明確にすることで子どもの自己肯定感を傷つけずに
叱ることができます。

叱る理由を説明する

大人でも、叱られているときに理由がわからなければ、行動を省みようとは思いませんよね。子どもも叱られている理由を聞くことで、何がどう悪かったのかを知り自分の行動を振り返ることができます。

「ちゃんとして」「どうしてできないの」「いいかげんにしなさい!」など、どれもよく子どもに使う言葉ですが、これだけでは何がどのようにだめなのか、それをする/しないことでどのような悪いことが起きるのかということが、子どもには伝わりにくいです。叱るときは、叱る理由を説明する必要があります。
例えば子どもが人の花壇の花を摘もうとしたとき、
「きれいなお花だから触ってみたくなるよね。
でも、人のものだからとってはいけないよ。」
などと理由を具体的に伝えます。
理由を知り、自分の行動を振り返り叱られたことに納得することで、行動を改めることにつながっていきます。

アイメッセージで伝える

子どもに何かを伝えるときには、アイメッセージを使うと非常に効果的です。
アイメッセージとは、「私」を主語にして自分の意見、感情などを伝える方法です。
例 スーパーで走っている子どもに叱るとき
「走ってはいけないよ。広いから走りたくなっちゃうね。でも走ると、人にぶつかるかもしれないし、
あなたがけがをするかもしれない。私は)あなたがけがをしたら悲しいな。

例 子どもが人の花壇の花を摘もうとしたとき
「きれいなお花だから触ってみたくなるよね。でも、人のものだからとってはいけないよ。
このお花を大切に育てている人がきっと悲しい思いをすると(私は)思うよ。

下線の部分がアイメッセージです。子どもは、社会的な常識やルールやマナーはわからないものも多いです。子どもにとっては、「だめなものはだめ。そういうルールだから」といわれてもピンとこないものです。それより、大好きな保護者が、「そんなことしたら私はいやだな」「私は悲しいな」と言ったことのほうが、とても良くないことだ、と気づける場合が多いのです。

またアイメッセージは、子どもの自尊心をはぐくむことにつながります。「私は●●だと思う」と伝えることに、上下関係や主従関係はありません。大人と子どもだから、大人が教えてあげる、という指導ではなく対等な人と人としてお互いの気持ちを大切にしながら意見や感情を伝えることができます
子どもに叱るときに一言、アイメッセージを添えてあげてください。思いがぐっと伝わりやすくなりますよ。

声色や表情を意図的に変えて伝える

特に0~2歳ごろの子どもは、まだ理解できない言葉がたくさんあります。言葉が理解できなくてもわかるように、叱る際は声色や表情を意図的に変えることをおすすめします。

怒鳴るのではなく、いつもより低い声で、表情もいつもより少し怖い顔をするなど少しの変化で問題ありません。0~2歳ごろの子どもは、保護者の表情を見て自分が安全か否かを判断します。怖い顔をしていつもと違う声を出していれば、保護者の様子が違うことにすぐに気が付きます。よくない行動をしたら、低い声を出して少し怖い顔をする、ということを繰り返していくことで、やがて行動と結びつき改善していきます。
しかし、0~2歳の子どもは悪いことだとわかってはいても、自分を制御する心が育っていません。そのため改善がみられないことも当然あります。大切なのは、伝え続けることです。なかなか改善しなくても、今は、未来のためにこれは悪いことだよ、と伝えておく時期だと思って気長に構えましょう。


絶対にやってはいけない叱り方

感情的に怒鳴ったり手をあげたりする叱り方

感情的に怒鳴ったり手をあげたりする叱り方は、絶対にしてはいけません。子どもは怒鳴られたり手をあげられたりすると恐怖でいっぱいになり、何が悪かったかなど考える余裕はありません。「怖かった」という感情だけがずっと残ります。

また、このような叱り方を続けると、子どもの脳は恐怖により委縮してしまうといわれています。感情的になったときは、一呼吸おき、飲み物をのんだり好きな音楽を流したりするなどして気持ちを落ち着かせることが大切です。

人格を否定するような叱り方

人格を否定する叱り方はやめましょう。
「だめな子」「頭が悪い」「太っている」などの言葉は、子どもの自己肯定感の低下につながり、信頼関係にも影響がでます。自分の存在価値がわからなくなり、ネガティブ思考に陥り自分から率先して行動を起こすことや考える力が失われるなど、よい効果はひとつもありません。
言葉は時に凶器になり得ることを鑑み、子どもの自尊心を傷つけないよう、適切な言葉を使うよう心がけましょう。

叱るときの心構え

子どもは失敗を繰り返して成長していく

子どもが何度も同じような失敗を繰り返すと、「何回いったらわかるの?」「どうして伝わらないの?」と落ち込んでしまうことも多々ありますよね。子どもは心も体も成長過程で、なんでもやってみて失敗してその経験からいろいろなことを学んでいきます。

子どもがお友達のおもちゃをとったら、
「どうしてそんなことをするの!」と言いたくなるところですが、こういう時こそが成長のチャンスです。友達のおもちゃをとったら、友達が悲しんで泣いて、友達の親御さんやママに叱られてしまったし、なんだか自分もいやな気持になった。そんな失敗体験が気づきにつながります。

子どもは大人のように、前に経験したことを次にすぐ活かせるわけではありません。自分の感情をコントロールする機能もまだまだ成長段階です。何度も同じような失敗を繰り返しながら少しずつ少しずつ社会のルールや人とのかかわり方を学んだり、自分の感情をコントロールすることができるようになったりしていきます。

叱るときは基準をきめておく

子どもは、同じことをしてこのあいだは叱られなかったのに今日は叱られた、という矛盾が起きると混乱します。保護者の機嫌に左右されて叱られるなどのことがあると、何がよくて何が悪いことなのかが
わからなくなってしまします。保護者が基準を明確にして叱ることで、子どもに善悪の判断を教えることができるだけでなく、子どもも叱られたことに対して納得できるようになります。

イライラしないための裏技はスキンシップ

育児は毎日のことで、体調が悪い時や忙しい時など、自分に余裕がない時に子どもにいら立ってしまう時があるのは、仕方のないことです。子どもにひどく叱ってしまいそうだと感じたときは、子どもとスキンシップをとってみてください。

意外と思われるかもしれませんが、人は無意識に、行動と言葉を一致させようとします。子どもを優しく抱きしめたり、頭をなでたりしながら「なんかい同じことを言わせるの!」と言うことはできないものです。

また、スキンシップをとるとオキシトシンという幸せホルモンが分泌されるといわれています。
イライラした時こそ、子どもの頭をなでたり、ハグしたりしてスキンシップをとり、ダブルの効果で、イライラを沈めましょう。

叱ったあとのフォローを大切に

叱ったあとはほめる

叱ったあとはほめるところを探します。子どもが行動を正したり、改善しようとしたときは、見逃さずその姿勢をほめましょう。
叱られたままでは、子ども大人も後味が悪いものです。少し時間が空いてしまったとしても、ぎゅっとして大好きだよとフォローしてもらえれば、落ち込んだ気持ちも和らぎます。

叱りかたを間違えたら謝る


保護者が叱り方を間違えてしまったときは、子どもにきちんと謝りましょう。

子どもは感情や意思をもった一人の人間です。大人が間違えたとき、どのように行動するのか子どもは大人の姿をとてもよく見ています。言い過ぎたなと思ったら、素直に謝りましょう。悪いことを素直に認める親の姿からも子どもは学びを得ます。

子どもに多くを求めすぎない

子どもにとって、大人に叱られて行動を正す、ということは

大人の言っている言葉を
聞いて・理解して・自分の感情を抑えて・行動にうつす
ということです。
1つ1つが子どもにとっては大変な作業です。これらのことがひとまとまりにできるようになるのは、大体4歳半ごろと言われています。

ではできるようになるまでは、叱らなくていいか?というと、そうではありません。子どもは保護者の表情や声色からやってはいけないことや危険なことを理解することができます。今、この子にどこまで伝わるかな?と考えながら、多くを求めすぎず、少しずつ毎日のなかで「叱る」を繰り返すことで子どもに教えていくことを意識しましょう。

さいごに


子どもに腹を立てる保護者の感情をすべて隠す必要はありません。必要な時は存分に、子どもに今自分が怒っていることや悲しんでいることを伝えることも大切なことです。子どもは親とのかかわりを通して、はじめて人間関係を学びます。人間らしく、自分らしく子どもとかかわっていけたらいいですね。

子どもは、エネルギーに満ち溢れ、なんでもやってみてトライアンドエラーを繰り返して成長していきます。保護者には体力と根気強さが求められますが、日々子どもは着実に成長していっています。
叱るとほめるを繰り返しながら、子どもに少しずつこの世界のことを伝えていきましょう。

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